―柳泉園組合 がれき受け入れ説明会―

受け入れ自治体の「説明できない」右往左往

 

                    20120420 環境ジャーナリスト 青木泰

 

4月5日(木、)東京都三多摩地区にある柳泉園組合(西東京市、東久留米市、清瀬市を構成市とする一般廃棄物の中間処理施設を持つ一部事務組合)において、宮城県女川町のがれき受け入れについての住民説明会があった。

受け入れに当たって、住民に説明を行い、住民の納得が得られれば受け入れを決定する。住民自治を尊重した上品な対応とは程遠く、受け入れ前に形だけ説明会を行い、受け入れのための露払いを行う。そうした意図がいたるところで見え隠れする説明会だった。

まず説明会は、柳泉園組合にごみを搬入する構成3市の住民に限られていた。柳泉園組合は、構成3市の北西の外れ、東久留米市と東村山市にまたがって存在する。柳泉園組合の煙突から放出される排ガスや煤塵は、周辺部の東久留米市と、東村山市に降り落ちる。放射能汚染がれきを焼却した時、放射性物質が飛散する東村山市の住民は、説明会の対象から外し説明すらしない。

そのうえ、構成3市の市民に対しても、質問は1~2問と注文を付け、再質問は行わないことという勝手に作ったルールを示す。おまけに録音はダメ、進行を妨害すれば、会場から出て行ってもらうとまで宣言した。説明会に駆け付けた市民は、柳泉園組合にとって、株主総会を混乱させる総会屋なのか?そうした失礼な対応である。

先行きが危ぶまれる説明会となったが、説明会は、柳泉園組合の思惑通りには進まず、がれき受け入れは、大きな暗礁に乗り上げるような事態となった。

 

<受け入れを前提として進められた説明会>

説明会は、他の自治体よろしく、受け入れのための儀式のように行われた。しかし、参加者から出された質問は、儀式の裏側にあるがれき広域化、受け入れによる問題を、的確に暴き出し、その問題を浮き彫りにしていった。

参加した市民が、この説明会では、作られた儀式の裏側に隠されようとしたがれきの広域化―受け入れの問題をほぼ余すところなく、明らかにした。

がれきの説明会は、がれきの受け入れ決定に至る簡単な説明の後、がれきを排出する女川町の様子がビデオで流された。

*仮設置き場に積み上げられた山のようながれきの映像。

*がれきの山を見ると、311のことが思い出され、早く片付けてほしい。と話す住民。

*引き受ける自治体に感謝の言葉を述べる市長。

実に感情に訴える説明会である。

しかし感情問題だけでなく、がれきの広域化が、安全性が保証されたものであり、被災地の復興をもたらす合理的で、公明正大な政策だったのだろうか?

さまざまな政策決定の裏側には、「感情問題」は抜きにできない。ということであっても、「感情問題」だけで政策の説明を済ませてしまうことは、「怪しさ」を漂わせる。

311によって、被災地住民がどのような被害を被ったのかは、繰り返し流された押し寄せる津波や、つなみの後に何もかも根こそぎになった、街の様子の映像を見た者にとって、頭から離れない。被災地の片付けに入った自衛隊が、がれきの第1次処理に手間取ったのは、がれきの間に残された被災者の遺体やアルバムなどの個人にとってかけがえのない遺物を大事に取り扱うということを念頭に置いてのものだったことは、多くの人が知っている。

しかし今がれきの処理で考えなければならないのは、国民の血税を投入する以上、浪花節だけで事を運ぶわけにはいかない。

安全性について、きちっと説明し、手続きの公明正大な進め方が、必要とされる。しかし柳泉園組合は、説明会を受け入れのための通過儀式にしようとしていた。

 

<安全性についての質問に答弁できない当局>

1)その他の有害物の調査は?

安全性については、参加者が一番心配していることだけに具体的な質問が次々と出されたが、東京都の環境局の課長と、柳泉園組合の環境課長が、答えにならない答えを繰り返した。

「女川の調査では、セシウム以外の有害物の調査を行っているのか?」については、“ストロンチウムやプルトニウムは遠くに飛ばない”と根拠なく言ったうえで、“文科省が100㎞圏内のプルトニウムやストロンチウムの調査を行い、問題なかった”というトンチンカンな回答を行った。岩手、宮城県のがれきは、100㎞圏内に留まらない。これでは答えにならない。

そもそも、東京都は、その他の有害物の調査を必要と考えているのかどうかを答える必要がある。必要と考えているなら、東京都は、住民の心配に答え、環境省に申し出を行うのが先である。継ぎはぎの知識でお茶を濁すべきでない。

「アスベストやヒ素は?どうなっているか」という質問には、“アスベストは不燃ごみに分けられているから、可燃ごみとして送られてくることはない”と根拠を示さない希望的観測を述べた。

アスベストは、耐火用建材としてさまざまなところに使用されている。地震で倒壊し、つなみで流された建造物では、いろいろなものが混在し、現状仮設置き場に移された態様によっては、可燃物の中にどのように混在しているかは、調査しなければ一般的には言えないはずである。

ヒ素は、シロアリ対策として家屋の柱に注入される薬剤に使用されているが、倒壊した家屋の柱を木屑にしたら、その木屑には、混入されることを防ぎようがない。実態調査を行わなければ、環境への影響は、予測すらできない。

また326の環境省交渉で明らかになったように、環境省は、環境省の責任でがれきのセシウム汚染調査すら行っていない。ましてやその他の有害物についても行っていない。がれきの全国・広域化処理しようとしている省庁としては、失格である。本来なら東京都や柳泉園組合は、他の都道府県のように環境省にこの点を問いただすべきである。環境省の広域化要請、それに対しての石原都知事の政治的な受け入れ表明。安全性をないがしろにした政治決着のつけが、安全性を問う説明会の中でよりはっきりした。

 

2)バグフィルターで放射性物質が捕捉できるか?

「柳泉園組合のバッグフィルター(以下「バグ」)は、日本スピンドルの製造と聞いた。メーカに聞くと、放射性物質を捕捉できるという点については、保証できないと言っている。」

これは衝撃的な質問だった。環境省をはじめ東京都は、これまで放射性物質を焼却しても、バグが付設されているので、99.99%除去できる、煙突からは放射性物質は放出されないと説明してきた。すでに環境省による「99.99%除去論」は、放射性物質の試験を行わなず、「充分なデータがないまま発表した」ものであることは、環境省自身の話として確認されていた。(*1)

しかしここでは、柳泉園組合にバグを供給している素材メーカが、市民の問い合わせに対し「保証できない」と答えたというのだ。

柳泉園組合や東京都の環境局がどのように答えるかが、注目されたが、驚いたことに東京都の今中課長は、次のように答えた。

“メーカが保証するものでなく、東京都の場合国のガイドラインに基づく方法で測定してすべて「不検出」になっている”と。

バグで放射性物質が除去できるかどうかは、極めて技術的なことである。極論すれば取れるか取れないかの技術の世界の話であり、焼却炉を管理している市町村のその時の思惑で決まることではない。

ところが「メーカが保証するものではない」というのだ。バグについてメーカが保証しないものを、では東京都の事務屋さんが放射性物質が取れると保証できると言うのだろうか?

バグのメーカが保証できないと言っているものを、除去できるというのは、虚偽の事実を知りながら、誤った宣伝を行う犯罪行為になるのでは?

またメーカが保証しなくても煙突から排出される放射性物質が「不検出」となっているため、問題はないという。この理由は正しい理由なのか?

「不検出」は、煙突から出る放射性物質が、「0」ということではない。測定数値が、検出限度以下だったということでしかない。測定の基準が甘ければ、じゃじゃ漏れ状態でも「不検出」となる。そのため、「不検出」は、バグで除去できている証明にならない。バグで除去できるのかの論議の時に「不検出」を論拠として話すのは、「夕ご飯に何を食べましたか?」という質問に「夕方の7時に食べました」というぐらいの筋違いの答えである。

今回市民の調査で、バグメーカは、この日本スピンドルだけでなく、名の上がっている7つのメーカは、全て同様に答えている。バグメーカは、大型焼却炉を持つ市町村が最大の顧客である。従来の感覚で言えば、バグメーカは、顧客の不利になるようなことは言わない。なぜバグで放射性物質は取れる保証はないと、各メーカが話したのか?

いくつか理由が考えれるが、メーカには多くの技術者もいる。各メーカはそれらすべての技術者の口に蓋をすることができない。今回のようなあまりにも荒唐無稽の話に対し、メーカの広報としても事実に反することを言えなかったということが考えられる。

また政府交渉ネットの藤原寿和氏は、「企業にはPL法(*2)によって、製造者責任が問われることになり、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定められている。石油ストーブ事故での判例でも、販売業者だけでなく製造業者も責任を問われた事例があり、『放射性物質が取れる』と言った時、煙突から放出された放射性物質によって何らかの被害が広がった時に、責任を問われる事態になることも考えられ、『保証できない』という発言につながったのでは」という。

いずれにせよ、バグで放射性物質が除去でき煙突からは放射性物質は放出されないという根拠のない虚偽の事実は、バクメーカによって否定され、がれきの広域化や焼却処理が、安全性の問題でどれだけ問題を含んでいるかが、より明らかになった。

 

3)排ガスの流量は?

「排ガスの検出下限値は、2ベクレル/m3と聞いたが、実際の排ガス流量は、いくらなのか?」

私自身も聞きたかったことが、参加者から質問として出された。排ガス流量が分かれば、煙突から大気中に放出される放射性物質の量が推定できる。検出下限値とともに、質問に出た排ガス流量は、環境影響を考えたとききわめて重要な値である。

「不検出」は、測定器や測定方法によって、定められた検出下限値以上のデータは、測定できるが、それ以下のデータは、「不検出」と表示してよいという約束事でしかない。そこで「不検出」と言っても、検出下限値一杯の放射性物質が、煙突から放出されている時には、放出予測最大量は、

「検出下限値」×「排ガス流量」で求めることができる。

したがって島田市の試験焼却の場合も、煙突からは「不検出」と発表されていたものが、島田市のデータを使って計算して見ると(*3)バグフィルターで捕捉されたものは、60~80%という計算結果が出ている。つまり煙突から20~40%出ていたということである。

環境省や都道府県や市町村の環境部門では、焼却施設周辺にどれだけの放射性物質が放出されているか?煙突から出る焼却炉の排ガスの流量が分かれば、計算できる。

柳泉園組合の場合、日量105トン焼却できる焼却炉が、3基ある。通常は2基稼働して1基は予備炉であるため、このクラスでは、流量は1時間当たり数万m3に上る。「3万m3」として1時間当たり6万m3となり、1日で144万ベクレルになり、2基ではその倍の288万ベクレルとなる。

この排ガス流量については、調べてみると答えたのち、結局単位すら明示しない、不正確な回答を当局は行った。

 

4)これまでの基準を80倍にした8000ベクレルの根拠は?

「これまで放射性物質を取り扱ってよい基準として示されているのは、(セシウム134や137では)100ベクレル(1kgあたり)だった。それが何故8000ベクレルで安全となったのか?」

これに対しては、都の環境局の今中課長は、「100ベクレルは、再生品に適用されるものであり、埋め立て処分するのは、8000ベクレルが基準となる。」と説明した。従来環境省が主張し、326の政府交渉でも市民側から間違っていると指摘された説明を繰り返した。しかしさすがそれだけでは、心もとないと考えてか「環境省が示した8000ベクレルについては、IAEAも認めた」と付け加えた。

従来放射性物質の取り扱いについては、原発施設や医療施設、研究施設内に限られるとし、一般環境中には、放射性物質は放出されたり、廃棄されることはないとされてきた。そこで放射性物質は環境基本法や廃棄物処理法そしてその他の環境諸法(大気汚染防止法、土壌汚染対策法、水質汚濁防止法など)には、適用除外されてきた。

その上で、クリアランス制度によって、基準(クリアランスレベル)を決めそれ以下の極々低濃度のものを、廃棄物として取り扱うことにしてきた。その値は、人体が受ける放射線量の影響値では、1ミリシーベルト(msv/y)の100分の1の10マイクロ(sv/y).放射能濃度は、核種ごとに違い、セシウムの場合はセシウム134,137では、100ベクレル(Bq/kg)だった。

(*4)この法律上は「廃棄物」について決めたのであり、廃棄物については、可燃ごみ、不燃ごみ、再生品と分けられるが、再生品だけに限って定めとものではない。

326の環境省との交渉において、交渉を要求した政府交渉ネットは、あらかじめ質問書を届けていたが、

交渉に対応した環境省の職員は、冒頭「環境省は放射能についての知見はない」と話した。(*5)今回のがれきの全国・広域化の受け入れを検討している自治体は、安全性について心配する市民に対し、環境省が安全性を保障していると説明してきた。その環境省が放射性物質についての知見がないと話したのだから天地がひっくり返るほどに事態である。神と崇めたてられていた教主様が、「私は神ではない」と言ったぐらいの騒ぎである。

東京都の環境局は、環境省が何と言おうと東京都は東京都として独自の判断を示して行くと力んでいたが、質問への答弁は、問われたことに正面から答えず、環境省がこれまで言ってきたことの焼き直し発言だった。多くの自治体が環境省に疑問や質問を提出する中で、自主性なく自分達の断片的な知識を饒舌にちりばめるだけの回答だった。

 

<手続きに対しても疑問点が続出>

1)がれき処理のお金はどこが出すのか?

「国から自治体にどれだけ助成金が出ているのか?」「西東京では、ごみの処理にも有料化でお金が取られている。それに加えて我々の税金が、がれきの処理にどれだけ使われているのか?」

この質問をしたお母さんは、次のようにも付け加えた。「私は子供が2人。放射能の危険性を考えると生きている気がしない。白血病になったらと本当に真剣に心配している。20年後説明に立っている行政の皆さんは、今の職を辞して年金生活に入っている。あなた方を支えるのは私たちの子供たちです。・・・・」

この質問の後、東京都が答弁に立ち次のようにやり取りが行われた。

“お金を払うのは女川町”

「女川町はお金がないでしょう!」

“県が支払う”

がれきの処理費は国が支払い、管理は県が行う。結局我々の税金が支払われている。その点をなぜ正直に話さないのか?それだけでなく、がれきを引き受ければ、交付金までつけるという話がまことしやかに話されている。(*6)

326の環境省交渉を経て環境省―被災県は、がれき処理費として約1兆円の予算を計上していたことが分かった。がれきの処理量は2250万トン(当初の2400万トンから少し減少)、阪神淡路や中越の地震時の処理費は、1トン当たり2,2万円。被災地の自区内処理をすれば、約5000億円で済む。

広域化処理をしなければ、単純計算で5000億円はがれき処理でなく、地元の復興支援や被災地の子供たちの避難費用に回せる計算になる。がれきの広域化処理をすれば、高い輸送費や分散処理する対策費にお金を使うことになる。

説明会での柳泉園組合や東京都の答弁を聞いていて、限られた予算の中でいかに有効にお金を使うかという自治体の原則すら感じ取ることができなかった。

 

2)廃棄物処理の責任-そして権限は?

「廃棄物の処理は、市町村で決めるもの。国の要請があったからと言って、市町村が判断して問題があれば断わればよい。受け入れ―受け入れないは誰が決めるのか?」

きわめて的確な質問が出された。それに対しての答弁は、行政権限が何処にあるのか、どのような手続きが必要なのかが、はっきりしない答弁となっていた。

“東京都市長会で決定し、2月13日に正副の管理者会議で受け入れの意志決定し、2月20日に周辺自治会の合意を取り、2月22日に柳泉園組合で説明した。”

市長会は行政の手続き上「任意団体」でしかなく受け入れの動機になっても、どこで正式に決定したのかの問いに「市長会」を挙げるのは、全くトンチンカンナ答えである。手続き上の要件ではない市長会での決定を理由に、正副管理者会議で「受け入れ意志」を決めたという。

廃棄物の中間処理を担っている柳泉園組合は、今回のような災害廃棄物の受け入れを決定する際には、まず周辺自治会や周辺住民に計り、議会の了解を得る必要がある。しかも今回の災害廃棄物は、放射能汚染やその他の汚染の怖れがある。

今回のがれき受け入れは、従来廃棄物処理施設では、取り扱っていなかった放射性物質を焼却処理してよいかどうかの判断が入っている。このような重大な決定を、議会にも諮らず済ませる。手続き上の瑕疵がこの質問で明らかになった。まず市民の要請を受け議会がこの問題をチェックする必要がある。

 

<住民自治会の合意を得ていると虚偽の報告>

 柳泉園組合には、3市の家庭や小規模事業者から排出されるいわゆる「生活ごみ」が集められ、施設内の焼却施設で焼却されている。一方瓶や缶など資源利用できるものは、柳泉園組合内や3市にあるリサイクルセンターで再生のための前処理が行われ、不燃系のごみと焼却して残る焼却灰は、日の出の最終処分場(埋め立て処分場)にここから運ばれている。3市の容器包装プラスチックは、包装容器リサイクル法に基づき、各家庭から出される時に別個に分別され、柳泉園組合の隣の工業団地内にある加藤商事の工場に運ばれ、圧縮梱包され、再利用工場に運ばれている。

 柳泉園組合に焼却施設が設けられるときには、周辺の自治会との間で、焼却するのは、3市のごみに限ること、それ以外については、自治会の了解なしには、焼却してはならないという協定が結ばれている。

 したがって今回のように遠く離れた東北から運ばれてくる災害廃棄物=がれきを受け入れるにあたっては、自治会の了解が不可欠な要件となる。

 ところが、今回の説明会で、柳泉園組合は、すでに周辺自治会の「合意」を取っていると説明した。(*7)

しかしこれに対して、東村山市の周辺自治会に入っている住民から「自治会内の議論はなく、自治会として『合意』は与えていない。」という質問意見が出された。

柳泉園組合は、これに対して、“(2月20日に)周辺自治会に説明会を行い、説明会の後、自治会の考えを聞き、その場で受け入れに対しての了解を取った。”と話した。その了解が「合意」である。と説明したが、その説明は説得性がなかった。

確かに柳泉園組合は、2月20日に周辺自治会への説明会を行ったが、自治会への説明はその時が始めてであった。また説明会の招集を受けた自治会は、とりあえず説明を聞きに行くという形で対応し、複数ある自治会によっては役員でない会員が代理出席したところもあった。

また説明の後自治会としての「了解」や「合意」を求めるという話も事前通達されていなかった。したがって自治会が、がれき受け入れについて、その日に受入れについて了解を与えることは、実質不可能であった。今回のような重要な決定には、自治会として全体会議や総会、そして役員会などで意思決定を図ることが必要だったが、20日に説明を受け、その日に了解するなどはできず、20日の時点での「合意」は、あるはずもなかった。

また廃棄物焼却施設の建設問題などで、過去には自治会長や自治会役員が、自治会の総意を問うことなく、行政当局に内緒に了解を与えていたと言ったことがあったが、今回はそのようなことはなかった。

私が調査した結果でも、周辺自治会から「合意」を取ったというのは、虚偽の事実であった。

 

<「アラブの春」を想起させる女たちの決起>

柳泉園組合の受け入れに向けての説明会は、周辺自治会から「合意」を取ったということが虚偽の事実だったことが、説明会の中で明らかになり、また次々と出される安全性を問う的確な質問に、当局が答えられず、受け入れに向けての通過儀礼としては、破たんした説明会となった。

東京都と23区、そして三多摩の市町村会は、石原知事の「放射能がガンガン出ているわけでない」という安全性への配慮の無い号令のもとに、女川町のがれき受け入れを進めてきた。

試験とは名ばかりで、合格結果が分かっている品川、大田清掃工場での試験焼却を実施し、市区町村の議会手続きなしに、がれきの受け入れを進めようとしてきた。その際の「民主的な手続」が、住民説明会であった。

しかし賛成派を動員したり、本質的な質問には答弁をそらし、これまで乗り切ってきた行政当局の対応に、柳泉園組合の説明会では、お母さんたちを中心に大きく立ちはだかった。

質問内容は一部紹介してきたが、短時間のやり取りに備えた事前の調査、内容の吟味と絞り込みがなされていたため、鋭い質問が行われ、説明会の会場は、子供たちの行く末を心配する真剣なやり取りの場と化した。行政当局が居並ぶ会場で、200名弱の参加者の中、発言することさえ大変な説明会場で、質問に立った市民の発言は、素晴らしいものであった。

私には皆さんが、インターネットを通して他での説明会や交渉、講演会などを見たうえで、学習され準備をしてきたのではと考えられた。

柳泉園組合での今回の説明会を見た時、インターネットを駆使してアラブの革命を起こした昨年の「アラブの春」を想起させる新たなうねりが、起こりつつあるのではと考えた。

これまでこの種の行政と面と向かい合う説明会などでは、発言の中心は、男たちであった。女たちは内容的に熟知している場合でも、あまり前面に出ることはなかった。

しかし身近に抱える子供たちの異変や自分自身の体調変化を受けて、「内部被曝には閾値がない」「今以上に放射能汚染を広げるな」「子供たちを守ろう」と立ち上がった女たちの後に引けない決意が伝わってきた。

環境省は、がれきの全国・広域化の旗を振りながら、受け入れに手を挙げた自治体で起きている混乱に対して、「放射能の知見がない」などと発表し、自治体当局の後ろ盾になることを放棄した。

がれきの全国・広域化の理由として、環境省自身が語ってきたことが破たんし始めている。「がれきの処理が遅れている」「被災地の復興支援のため」と言ってきたことを、自ら「がれきの処理は順調に進んでいる」と否定したり、被災地自治体からの「被災地に必要なのは、雇用と住宅」といった発言によって。

環境省の全国・広域化方針は、結局被災地で行えば約5000億円で済むがれき処理を、広域化することによって約1兆円の金を使う途方もない無駄遣いであることが326の交渉などを通してわかってきた。(*8)

環境省や国は、被災地との絆を前面に訴えながら、実は被災地の復興は、そっちのけでがれき処理に巨額の予算を獲得し、予算の消化を自己目的にした妖怪のようになりつつある。これでは、被災地の不幸をネタにした火事場泥棒だと言われても仕方がない。巨額の予算をバックに「お金に群がる自治体」に受け入れを迫り、手を挙げた自治体は、住民の健康や命、そして自治体としての矜持さえも放り出そうとしている。受け入れを巡っての住民の闘いは、その理不尽さへの抗議の意味も含んでいると言える。

当初受け入れを拒否するのは、「非国民」と言った状況になっていたが、インターネットの世界では、自民党の動向調査に現れたように「10」対「1」の大差を持って広域化に反対の意思が示されている。週刊誌の世界でも3月中旬からようやく5誌で、「ガレキ受け入れは被災者支援にならない」「あえて問う!なぜがれきを全国にばら撒くのか―震災復興不都合な真実」「震災がれき広域処理―亡国の日本列島放射能汚染」などと事実報道がなされ始めた。

柳泉園組合の説明会で示した住民の真剣で、子供たちの未来を見通す声は、今日本版「アラブの春」として大きなうねりとなって広がってゆくか?ぜひ根付かせて行きたいものだ。

 

*1:東京新聞12年1月21日「こちら特報部」

*2:製造物責任法

*3:「島田市の試験焼却結果を考える~バグフィルターで99.9%取れるのか」政府交渉ネットHP参照

*4:原子炉規正法第1条、61条の2大項、同規則2条、別表

*5:東京新聞3月27日「こちら特報部」

*6:月刊廃棄物12年1月号「新春インタビュー 乗り越えよう、災害廃棄物! 環境行政最大の課題に挑む」

*7:柳泉園組合4月5日配布資料

*8:326がれき全国広域化問題―環境省交渉報告 青木泰

 

 

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